劇団半端者。  

2008年11月19日

期間工だった僕 前編 [ 世間どんぶり ]

マクドナルドを『マック』と呼ぶと「マックはパソコン、ハンバーガーは『マクド』や!」と関西の友人に訂正された過去を持つ半蔵門です。野球で言う「マック」は今でこそ金子(まんどくせ)誠選手会長ですが、ちょっと前の野球界を揺るがしたマックといえば、日本のプロ野球を素通りしていきなりアメリカで選手になったマック鈴木。のちに日本球界にも在籍してましたが、高校中退のため甲子園にも行かず野球留学という手法に、野球ファンの「保守層」から厳しい意見があったのは事実。それを考えると、いきなり大リーグ指名を待つと宣言した田沢(新日本石油ENEOS)の登場は、ついに日本の野球が恐れていたことが起きたんだなと思う。人材流出が怖くて、海外のプロ球団と直接契約したアマ選手は日本のプロ入りをすぐに認めない制度を導入したけど、結局高校生野球部員が2年生のうちに大リーグと契約するなんて出し抜きがありそうで、結局マック鈴木どころか江川騒動からも学んでいない様子。ま、ナベツネさんの息があるうちは、プロ野球は構造改革なんてできそうにないよねと失笑しつつ、超ロングな本文です。

かつて僕は、期間工という仕事を何度か経験している。メーカー直轄の採用だったおかげでそれなりの待遇ではあったが、同じ時期に入っていた知人は、寮の飯がまずいだの、残業がきついだのボヤキまくりで、1年で2回正社員雇用だった会社をクビになった苦い経験を持つ僕は、それを冷ややかに見ていた。そんなに嫌なら辞めればいいのにと。
冷ややか、と言ったのには訳がある。たまたまその手の雇用が多い東海地方の中心である名古屋で飲んでいた時、店で同席した人がメーカーではなく、当時からあった人材派遣で自動車関連の仕事をしていたので話を聞くと、寮は6人部屋に3合炊き電気釜がひとつという、劣悪というよりも何か大事なところがスッポ抜けた労働環境だったらしい。かつてのタコ部屋を知る世代からすると、雨風をしのげるだけマシとなるのだろうが、刑務所では自炊はできないので、生活上の自由に制限があるという点ではよく似ている。
会社によって期間工への待遇がまちまちであることは、企業体力を考えて多少は仕方ないと思うのだが、最低限人間として扱ってくれているかとの視点では、メーカーの直接雇用と派遣の間は事情がかなり異なる。
メーカーだと、秋葉原連続殺傷事件以前から、期間工への待遇が風評となって業績を左右することもないわけではないので神経質だったりするが、期間工の問題について株主総会で言及されたという記憶はない。かつて、原子力発電に反対するアピール手段として電力会社株を買い、総会の場で発言する「反原発株主」がいたが同様に、投資目的ではなく社会的な意味での「モノ言う株主」がほんの少しではあるけど現れてきた。電源開発株を買おうとしたあのファンドも、広義で含まれるであろう。さすがに期間工の待遇改善を直接訴える株主こそまだいないが、高い問題意識をもっている人たちがアクションを起こす土壌は、反原発株主の例を考えると確実にあるだろう。配当と同じくらい、社会から見て恥ずかしくない仕事をしろとの姿勢を打ち出した社会投資家の登場を、総会屋呼ばわりして追い出しているうちでは、日本経済は多分ひとり上手のまんまである。
では派遣はどうなのか。グッドウィルみたいにどう考えても言い訳できない違法行為を公然と儲けの手段としていた企業であれば廃業やむなしであるが、逆方向からいえば派遣先と結託して違法を見えなくしてしまえばどうにでもなるうえ、A社で問題が発覚すれば派遣先をB社に付け替えれば元の話はなかったことにできることになる以上、前述の株主ブレーキが効かない可能性が高い。しかも規制緩和でこの業界は出版業界と似ていて、つぶれた会社の有志で新会社ができて、被派遣者が知らないうちに所属会社が移ってたケースなんてのも多いので、おかしいと意見を被派遣者が声を挙げようにも、のれんに腕押しで終わっている。
いずれにせよ期間工の身分が、お世辞にも安定かつ後ろ盾のある世界ではないというのは厳然たる事実。以前いた会社でも、ある時期急に生産を絞った(減らした)ために、ほとんどの期間工を夜勤なしの定時帰宅(帰寮)にしてコスト削減を図ったが、それは裏返すと家族を養うべく地方(本道や青森、沖縄など)からやってきた期間工が、ある程度計算していた給与額をもらえないことでもある。この事態では家族を喰わせられないと、一時金が加算される満期(たいてい6ヶ月)を待たずに多数の期間工が地元に帰るはめになった。僕のような単身よりも影響が深刻な所帯持ちにしてみれば、経済情勢に裏切られた感覚ではないだろうか。

派遣の期間工に関する別視点の話をひとつ。
本州で今も派遣の期間工として働いている友人は、肩に力の入った状態で5年以上働き続けている。先の見えない時代でそのままだと、身体も気持ちも擦り切れてしまうので、多少のいい加減さも必要だと諭したことがあるが、性転換して現在女性として働いている以上、相手にツッこまれる余地を与えたくないのだと言う。確かに「わがままを言うならそれなりの(言っても納得させるだけの)仕事をこなすのが前提」とは中田英寿も言っているが、病気として認知が進んでいるGID(性同一性障害)をわがままと呼べるだろうか。しかし世間ではまだまだ、性転換=女になった=水商売の三段論法が幅を利かせているし、ゲイ界ですら同様の論理を持つ人も少なくない。かつて自分を苦しめたその三段論法のままに生きる人へ、あるいは履歴書だけで自分を落とした数十社の企業への復讐と言わんばかりに、昼間中心の生活基盤を守り、偏見と呼ぶには幼いはずの世間の目と闘うべく手綱を緩めない彼女の張りつめた人生を、生真面目である彼女の性格を差し引いても、僕は決して幸せだとは思えない。そこまでしてまで、セクシュアル・マイノリティとしての生活を守らねばならない人がいることを知ってほしいから、あえてここに書いたに過ぎない。
某著名ゲイブロガーさんも、首都圏で業界にツッコミを入れているヒマがあるのなら、もっと地方でカメラを回しなさいって。
そんなことを思い出しながら、ブログ記事の原文を保存しているワープロソフトのファイル整理をしていたところ、保存したままのファイルが出てきた。

今回は長くなるので、ここでいったん切って、後編にてそのファイルを引っ張り出して、期間工というものを考える記事を書こうと思う。

Posted by kazumi711 at 2008年11月19日 | コメント(0) | Trackback(0)



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